器の旅 〜四日市〜


三重県四日市。萬古焼の産地。
知名度は低いかもしれないが、土鍋の生産量日本一である。
そのシェアは80%を占めるというので、日頃目にする土鍋はほとんど四日市産ということか。

萬古焼の発祥は、三重県桑名の豪商、沼波弄山という人物にある。1736〜1740年という江戸中期に窯を開いたというのが、萬古焼の始まり。教養人であった沼波弄山は茶の湯にも精通し、京焼の技法を取り入れて、異国情緒溢れる器をつくって評判を得たという。

そこから、一度は途切れた萬古焼は、沼波弄山から約半世紀後に復活する。江戸時代後期には、流行した煎茶とともに萬古焼の急須は広まる。特に萬古焼は「紫泥急須」というのが有名だそうだ。


急須と言えば、常滑が有名だ。三重県と言っても、地理的には瀬戸、常滑、美濃とかなり近い。萬古焼にも地理的な影響があるということなのだと思われる。




四日市では萬古焼は有名なのかもしれないが、かなり閑散としている。まず、観光する場所は限りなく少ない。一定の範囲に窯元が集まっているわけではなく、広いエリアに点在しているようだ。萬古焼を紹介する施設も「ばんこの里会館」ぐらい。

近年、陶芸家の内田鋼一さんによって「BANKOアーカイブデザインミュージアム」という私設美術館がオープンしたが、それでもマニアックな存在である。残念ながら、お盆ということもあり、デザインミュージアムは閉まっていた・・・





今回の旅では、萬古焼の名品を目にすることができなかった。そこには常滑をはじめとする他の産地との差別化が感じられなかった。

歴史としては、300年ある萬古焼。1人の商人から始まった萬古焼を、独自性あるものとする動きが望まれる。

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