石水美術館


四日市から伊勢鉄道に乗り、約1時間。三重県の津から1駅隣りのJR阿漕駅という無人駅から、徒歩12分。観光地でもない辺鄙なところに石水美術館がある。
駅からは看板もなく、美術館にほど近い幹線道路の入り口に看板をようやく見つける。電車で来るには、1時間に1本ということもあり、非常に不便な場所だ。

石水美術館は、江戸時代に伊勢商人の豪商だった川喜田家によって、その蒐集された美術品を展示するために設立された。その川喜田家の16代当主こそが、陶芸家の川喜田半泥子だ。

川喜田半泥子は、三重県津市の百五銀行の頭取などを務めた後、還暦近くになって陶芸を始める。素人であった半泥子が、趣味の域を超え、その遊び心溢れる作品が評価され、今では「東の魯山人、西の半泥子」と呼ばれるようになった。



川喜田半泥子の作品を見る機会は、意外と少ない。というよりも常設しているのは、石水美術館だけのようだ。つまり、半泥子の作品を見たければ、三重県の辺鄙な場所まで来なければならないのだ。そして、行ってきた。。。

残念ながら、作品の写真は撮れなかったが、大胆な作風は、確かに魯山人を思わせるものがある一方、歪みや色むら、ひび割れなどを「味」として捉えた自由な作風は魯山人とも異なる個性を発揮していた。

これを芸術と見るか、素人の趣味と見るかは、結局のところ評価されるかどうかに関わっている。

『ザ・フォーミュラ』という本がある。膨大なデータを分析し、そこから成功者になるための普遍の法則を科学的に導き出したものだ。

そこには、アートの世界で評価されるために必要なことが書かれている。それは、ネットワークだ。アートのように抽象度の高いものを評価するには、評価する側にもリスクがあり、指標がいる。他の評価者から評価されているものは、高い評価をしやすい。

単なる趣味の作品か、芸術作品か。

これを決めるのは、その作家の持っているネットワークが大きな影響を及ぼす。例えば、一人の著名な評論家から評価を受けるとする。そうするとその評価はさらに次の評価を呼ぶ。成功は成功を呼ぶ。ネットワーク効果だ。

川喜田半泥子は、三重県の名士である。地銀の頭取を務めた人物である。評価されるだけのネットワーク、基盤を持っている人物であった。

これを実力と呼ぶべきなのか。

結局は、見る側の人間が、その作品を気にいるかどうかが大切であり、好きか嫌いかだけの問題である。

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