器の旅 〜会津本郷〜
会津本郷。会津若松駅から1時間に1本のバスに乗って、40分程度で辿り着く閑散とした街。
どこの陶芸の街にも共通していることは、人がいない。静かだ。
会津の焼きものの歴史は、桃山時代に千利休の弟子でもあった大名の蒲生氏郷によって始まった。瀬戸から陶工を招き、瓦から茶陶まで焼かれることになる。その後、江戸後期には磁器の生産も始まる。陶器と磁器の両方を焼く産地は珍しい。
日本最北の登り窯があり、かつては栄えたこの街も今は13の窯元が、街の区画に点々と存在する。
観光客を見かけたのは2人。平日というのも関係なさそうだが、とにかく人がいない。そのためか、窯元のいくつかは開いておらず、非常に残念だった。
会津本郷焼で有名なのが「にしん鉢」。この地方には保存食としてにしん漬がつくられており、そのための鉢は伝統的な焼きもの。このにしん鉢は、明治時代、ブリュッセル万国博覧会で受賞するなど、民藝運動の中でも取り上げられた。
街の真ん中に、会津美里町本郷インフォメーションセンターがある。その2階が焼きもの資料館になっている。
会津本郷焼といえば、宗像窯だ。かつて柳宗悦も訪れたという窯は、1719年創業。
現在も、8代目と9代目によって、焼きものが焼かれている。にしん鉢で受賞したのも本郷窯だ。
鉄釉、白釉、青釉。地元の陶土と自然釉で焼かれた器が並ぶ。
宗像窯から少し歩いたところに、日本最北の登り窯が保存されている。現在はほとんど使われることはないようだ。
少し残念だったのは、会津本郷焼のアイデンティティとは何かがわからなかったこと。伝統的な焼きものを作っているのは宗像窯の他2、3の窯元。自由な作風で焼きものを焼いている窯元が多く、デザイン性などを含めて、窯元の多い益子などのレベルに比べると厳しいものがある。産地の特徴を活かした焼きものの上に、独自の創作があってしかるべきだと思うのだが・・・
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