民藝の旅 〜松本〜

 


民藝の街、松本。
駅に着いて、最初に向かったのが松本民芸館だ。かつて柳宗悦によって提唱された民芸運動に共鳴した丸山太郎によって創設された。

民藝運動とは、簡単に言ってしまえば、日常的な暮らしの中で使われてきた手仕事の日用品の中に「用の美」を見出し、活用する運動。要するに名もなき職人が作った器などの工芸品の中に美を見出すことだ。



丸山太郎は、自らが工芸作家であり、蒐集家であった。その丸山太郎が集めた陶磁器、染織物、箪笥などは、約6800点のコレクションにもなり、それらが展示されている。

“美しいものが美しい 

では何が美しいかと申しますと色とか模様とか型とか材料とか色々あります
その説明があつて物を見るより無言で語りかけてくる物の美を感じることの方が大切です 

何時 何処で 何んに使ったかと云うことではなくその物の持つ美を直感で見て下さい
これはほとんど無名の職人達の手仕事で日常事です
美には国境はありません”


美しいものは説明も要らず、直感で美しいと感じる。
その意味が、収集品の数々を見ていると実感してきます。





建物は、東京にある日本民藝館と同じぐらいの規模でしょうか。
松本民芸館の方が、作品の展示数が多く、とにかく密度が高い気がします。

雑多にも思える工芸品の数々。
種類も大きさも、時代もバラバラ。
それでも、そこには統一感のある美しさが保たれている気がするのは、丸山太郎という1人の蒐集家の目利きによるものだろうか。








訪れる人もまばらで、時間がゆっくりと流れています。
特に目を引いたのが、100年、200年以上経ったという家具の数々。
木目の美しさや曲線の美しさ。
窓から差し込む柔らかい光に照らされて、静かにたたずむ。




普段、情報に囲まれているからこそ、こうした物をただ直感で見る、感じる時間には、とても価値があると思いました。



松本民芸館から、松本城のある市内中心地へ。
土産物屋が並ぶ中町通りに着いて、ちきりや工芸店へ向かいます。




松本民芸館を創設した丸山太郎がひらいたお店で、日本各地の民藝品が売られている。
小鹿田焼、丹波立杭焼、布志名焼、砥部焼・・・

狭い店内にとにかく多くの陶磁器が並ぶ。
気をつけて移動しないと、ガシャんといってしまいそう。

これまで陶芸の産地をめぐってきたので、あえてここで買わなくてもなぁとも。
東京だと銀座の民芸の店たくみでも買えたりする・・・

松本は民芸を街に取り入れ、美意識や文化レベルが高いと思うものの、陶磁器や染織物といた工芸品の産地ではないのだ。

中町通りの店は、新型コロナの影響もあって、空き店舗もあった。民芸の老舗店、翁堂 蔵の店は閉店していた。民芸洋食店たくまも閉店、民芸カレー店デリーも閉店。
持参したガイドブックが10年前のものと古かったためか、存在しない店も多く、良い店が受け継がれないという寂しさに直面した。民芸危し!?




中町通りにある中央民芸ショールーム。
松本民芸家具は、丸山太郎と共に民芸活動を行なった池田三四郎が始めた。

池田三四郎は、安土桃山時代からの伝統がある松本の木工業の復興に取り組み、柳宗悦の紹介で、富山県から木工家の安川慶一を指導者として迎える。バーナード・リーチからは、英国家具に着いて学ぶなどして、松本民芸家具は現在も続いている。

店内には、数十万円もするが、木目模様の美しい家具が並んでいた。
広い家に住むことができる身分になれば、ああいう家具が欲しい。
そんな日が来ることはなさそうだが。。。





民芸喫茶店まるも、で一休み。
器は丹波焼の黒釉か。ティラミスに民芸。シブい。



半日もあれば、見るべきところをまわることができる。
宿は、民芸ホテル、松本ホテル花月。
ロビーのインテリアや雰囲気がどこか大正時代のようで、美意識を感じる。

全体を通して、食べ物も美味しく、文化度の高さを感じる街でした。


コメント

人気の投稿