民藝の旅 〜倉敷〜


岡山県倉敷市。かつて紡績で栄えた街は、民藝が栄えた地でもある。
倉敷民藝館は、東京の日本民藝館に次いで、昭和23年に開館した日本で2番目にできた民藝館だ。

倉敷の実業家である、倉敷紡績、現在のクラボウ、クラレの創業家の大原孫三郎が民藝を支援したことから、この地に民藝の足跡が刻まれた。


倉敷、よく景観が保存されている。美観地区として、江戸から続く蔵の街並みが倉敷の特徴で、とても風情がある。その街の真ん中に倉敷民藝館がある。
但し、残念ながら訪れる人は多いとは言えない。。。
むしろほとんどいないと言える。。。



倉敷民藝館に入って、まず最初に目に入ってくるのが、ドイツの建築家でバウハウスの創立者ヴァルター・グロピウスの直筆の書だ。

倉敷民藝館は、その美しい日本の手工芸品の蒐集によって、唯だ歴史的遺産の鑑賞のためだけでなく近代的生産の方法を助長する新しい創造の刺激として、この国全体の文化の重要な保護者である。  
 
1954年7月 ワルターグロピウス

 

ただ素晴らしい。その価値を測り知る者。それがバウハウスの創立者であるというだけで、この場所を訪れる価値がある。




狭い館内には、日本だけでなく、海外を含めて数多くの工芸品が展示されている。
ここでも、民藝の基本は「美しいものは美しい」だ。
ただ、理屈抜きに美しいと思ったものを直感で感じる。
それだけでいい。





民藝館のすぐ近くには、大原美術館がある。
そう、大原孫三郎が海外の美術品を蒐集したものが展示されている美の殿堂だ。







ここ大原美術館には工芸館があり、濱田庄司、河井寛次郎、富本憲吉、バーナード・リーチ、棟方志功、芹沢銈介の作品が数多く所蔵されている。
それぞれの作家ごとに展示室があり、工芸ファンには必見だ。

だが、残念ながら工芸ファンはとてもマイノリティらしい。
大原美術館のハイライトは、やはり西洋絵画にあり、モディリアーニ、ルノワール、ピカソなど有名な西洋画家の作品が見所となっている。
工芸館を訪れる人は、ただただ足早に先に進んでいくのが現実・・・


工芸館の素晴らしさは、その建物のこだわりだ。
一歩足を踏み入れると、足元にギシギシと軋みを感じる。
レンガのように木のブロックが敷き詰められ、その1つ1つが鈍い光沢を放っている。

展示用のショーケースは、木枠のもの。
蔵をそのまま利用した建物は、時間が止まったかのように静謐な空間を創り出している。

そう工芸品の展示のためのアナログな、感性の空間が工芸館である。

足早に過ぎ去っていく多くのお客さんは気づかないが、創り手の並々ならぬ工芸への理解とこだわりを感じられるのだ。


感性を動かされる街でした。
コロナ禍において若い観光客が多く、少しチャラチャラした観光地化した場所ながら、少し目を凝らして見れば、そこにはセンスが光る様々な美がありました。










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